SCD-XA1200ES (Sony) 2006年
10万円以下の普及価格帯「ES」モデルはハイコストパフォーマンスモデル
前回紹介したSCD-XA333ESも含め、当時のESシリーズは10万円を超えるモデルが多い中、システムのスマート化と高効率化によるシンプルでムダを削ぎ落としながらも質の要所には極めて高度な技術を凝縮したプレーヤー
SACDのマルチチャンネル出力にも対応したSACDプレーヤー。DACには、1つのIC内に複数の1ビットDACを搭載し、出力信号を加算することで歪みの平準化を行なう「スーパーオーディオD/Aコンバータ」を装備。DAC付近にはマスタークロックも配置し、より精密な再生が行なえた。 7919

外観
デザイン的にはシルバー基調でシンプルで機能的なデザイン
操作性を重視して傾斜形状のフロントパネルと重厚な金属シャーシーが特徴でした。
特にフロントパネルの上部が、奥に向かって滑らかにカーブしながら傾斜しているのが最大の特徴です。この傾斜面に再生や停止などの主要な操作ボタンが配置されています。
定番ですがフロントパネルの右側に、ソニーの高級CD/SACDプレーヤーの代名詞とも言える「AMS(Auto Music Sensor)ジョグダイヤル」がしっかりと配置されています。 このダイヤルを回すことで、カチカチという確かなクリック感とともに、前後のトラック(曲)へ瞬時に、かつ連続的にアクセスすることができます。ボタンを何度も連打する必要がなく、感覚的かつスピーディーに聴きたい曲へ到達できる、非常に優れたインターフェースです。
また、スラントした傾斜面には、ジョグダイヤルでの選曲操作と連動する形で、「再生」「一時停止」「停止」といった最も頻繁に使用するトタンが配置されています。
選曲(ジョグダイヤル)と再生(プッシュボタン)という一連の操作が、連続して手の動きで行えるようレイアウトされており、操作時のストレスを徹底的に排除しています。
中央のフロントベゼルは音質向上(制振)とデザインの美しさを高い次元で両立させた、ESシリーズならではのこだわりが詰まっている部分です。
フロントパネル右下には、標準ジャック対応のヘッドホン端子と、独立したアナログのボリュームつまみを備えています。これにより、アンプを使用せずとも、内蔵の高性能D/Aコンバーターの音をヘッドホンでダイレクトに楽しむことが可能です。 
構造
ディスク部分はセンターメカマウント構造を採用していて重量物であるメカを中央に配置することで、筐体の左右の重量バランスを均等に保ち、再生時の内部振動や外部からの偏荷重による歪みを最小限に抑えています。
但しトレイの出入り(ローディング動作)は、安価なプレーヤーのような軽いプラスチックで重厚感はなく、ここら辺はコストダウンが見受けられます。
内部は驚くほどシンプル。コストダウンとは言え、これがESシリーズ?構造。
天板を開けると、中央のドライブメカと左側の電源トランス、そして右側にまとめられた1〜2枚のメイン基板があるだけで、筐体内には大きな余白(空間)が広がっています。
電源トランス部。良いような解釈をすると電源トランスからは強力な漏洩磁界が発生します。もしトランスと微小な音声信号を扱うアナログ音声回路が物理的に近すぎると、この磁気ノイズが回路に飛び込み、音が濁る原因になります。あえて内部に十分なディスタンス(距離)を置くことで、物理的にノイズ干渉を遮断し半導体の集積技術が飛躍的に進歩したことが理由かDSDデコード処理や高度なマルチレベルD/Aコンバーター機能が、超高性能な1〜2個のLSI(ICチップ)に集約しワンボード-に収まったのかもしれません。
前回紹介したSCD-XA333のアナログ回路とは雲泥の差を感じてしまいます。
ちなみに過去紹介したSACDプレヤーの2機種の内部です。
SCD-XE800
SCD-XA333ED
ある意味、SCD-XA1200ESでは、可能な限り主要回路をひとつのメイン基板上にまとめてレイアウトしています。
トレイから読み取ったDSD信号が、最短距離でDACを通り、そのまま背面のアナログ出力端子へと抜けていく」という直進的な最短信号経路を構築した結果、無駄な配線コードが姿を消し、非常にすっきりとしたシンプルな見た目になったのでしょう。
背部です。
出力端子として光デジタル、同軸デジタル、アナログ5.1chを各1系統用意。電源ケーブルは着脱式。 
CD,SACD再生
電源ONからディスクのイジェクト、ディスクのTOC(Table Of Contents)のリードインまでの時間が結構長い。
CD音質はよりシャープになり高音域の表現が増した感じです。悪く言えばカチカチ音的も硬さを感じてSCD-XA333ESのような太く濃厚で重厚なソニー特有のエネルギー感とは違いクリアで癖のない、素直な高解像度はありますが好き嫌いがある音質です。
SACD再生はCDの硬い音質から若干柔らかめになり、鮮明度が上がっている音質です。特にバイオリンの伸びやかな高音やシンバルの微細な振動において、デジタル特有の硬さやトゲトゲしさが全くありません。耳当たりの良いしなやかな質感を感じさせてくれます。
SONYのSACDプレヤーとしては末期モデルに近いのですがDSDディスク再生ができないのが残念。(同時期のPS3やその後のSCD-XA5400ESとSCD-XE800は可能でした。)
本体スペック
【スーパーオーディオCD再生時】
再生周波数範囲: 2Hz~100kHz
周波数特性: 2Hz~50kHz(-3dB)
ダイナミックレンジ: 108dB以上 / 106dB / 104dB
全高調波ひずみ率: 0.0012%以下 / 0.0015% / 0.0018%
ワウ・フラッタ: 測定限界(±0.001%W-Peak)以下
【CD再生時】
周波数特性: 2Hz~20kHz(JEITA)
ダイナミックレンジ: 100dB以上 / 100dB / 99dB
全高調波ひずみ率: 0.0017%以下 / 0.0018% / 0.002%
ワウ・フラッタ: 測定限界(±0.001%W-Peak)以下
【入出力・チャンネル】
チャンネル数: 5.1ch / 2chステレオ
デジタル出力: 光 / 同軸(※ともにCD再生時のみ)
アナログ出力: マルチチャンネル(5.1ch)、アンバランス(ステレオ2ch、RCA)
【出力レベル】
デジタル(光): -18dBm(固定)
デジタル(同軸): 0.5Vp-p(固定)-
アナログ(アンバランス): 2Vrms(固定)
ヘッドホン: 10mW(32Ω負荷)
【寸法・質量】
外形寸法: 幅430 × 奥行380 × 高さ130 mm
質量: 約9.5kg
Play Station3とSCD-XA1200
本機内部のコストダウン仕様を見て、同時期に発売されたCD/SACD再生ができる初代Play Station3(CECHA00:60GB)を持ち出して来ました。
初代PlayStation 3の初期型モデル(CECHA00)は、単なるゲーム機という枠を超え、ハイエンド・オーディオ/ビデオプレーヤーとしても対応できる名機だと思っています。(但し初期化型のみでコストダウンが図られた後のPS3では、この機能は完全に削除されてしまいました。)
特徴は強力なCellプロセッサによるSACDに記録された膨大なDSD(Direct Stream Digital)信号のデコード処理に、当時スーパーコンピューター並みと謳われたCellプロセッサの圧倒的な演算能力を贅沢に使用しています。また、DSD音源も再生が可能で対応機種が限られる極めて情報量のDSD多いサウンドを楽しむことができます。
通常の音楽CD(44.1kHz/16bit)の再生においても、PS3は驚異的なポテンシャルを発揮しました。
当時の数十万円クラスのCDプレーヤーにしか搭載されていなかったようなアップサンプリングなどの高度なデジタル処理が可能でした。
このアップサンプリングはCDの音声を、本来のサンプリング周波数の2倍(88.2kHz)または4倍(176.4kHz)に補間・拡張して出力できます。これにより、デジタル特有のノイズを可聴帯域外へ追いやり、アナログレコードのような滑らかな音質を再現します。この初期型は音楽再生能だけではなく、Play Station2互換機能やPCに匹敵するようなインターフェイス類を持ちあわせていました。
接続はHDMIでもアナログ出力両方に対応していました。今回はモニター側をHDMI、アナログ出力をアンプに出力しています。
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音質的には全体的に力強く、濃密で、圧倒的な情報量を提供してくれます。CD再生はPS3機能のビットマッピングとアップサンプリング」の組み合わせです。16bitのCD音源が持つ特有の薄さが消え、濃厚で滑らかな質感へ変化します。
残念ながらこれらの機能とは裏腹に内部で高速回転するファンやスイッチング電源、基板上のノイズ源を多く抱えるゲーム機であることも現実です。
Play Station3ではDSDディスクを再生できます。8007
CellプロセッサがデコードするDSDの音は、信じられないほどワイドレンジで、低域から高域までエネルギーが満ちています。
特に印象的なのが楽器やボーカルの音がドスンと前に出てくる実体感に優れています。
DSD音源は以前紹介したSCD-XE800(sony)やその上位機種SCDーXA5400ESでも可能でした。
SONY SCD-XA5400ESでも同じ環境で再生してみました。
再生音は、PS3より更に質感が上がり、低域は圧倒的な密度と重厚感を持っています。ベースやバスドラムの輪郭が曖昧にならず、タイトかつズッシリと響きます。低音の充実感、定位の安定感、音質の上品さではXA5400ESが上回っている印象です。
その他に音質は関係ありませんが、初期型のみ前面の開閉フラップ内部に「コンパクトフラッシュ」「SDカード」「メモリースティック」の3系統のカードリーダーを備え、デジカメの画像を直接読み込んで高画質で表示するハブとしての機能を持っていました。また、USBポートも4基搭載されていましたが、コストダウンモデルではカードリーダーが全廃され、USBポートも2基へと半減しています。
外装パーツとデザインは初期型のみに与えられた高級AV機器の仕様でした。
ディスク挿入口周りに美しいクロームメッキパーツを採用し、本体ロゴも立体的なエンブレムがあしらわれています。一方、スリム化やコストダウンが進んだモデルでは、メッキパーツの省略やマットな梨地仕上げの樹脂への変更、ロゴのプリント化などが行われ、インダストリアルデザインとしての方向性が大きく「実用的な家電」へとシフトしました。(本来のPlay Station3のゲームや映像に関しては別の機会でまとめる予定です。)
逆にこの物理的な仕様に対していくつかのデメリットも存在しました。最初期のPS3は、90nmプロセスのCell/RSXプロセッサを搭載しているため発熱が凄まじく、巨大なヒートシンクと強力な冷却ファンを備えていますが長時間使用ではデバイスノイズが発生し、同時期のXBOX360でも発生した激しい温度変化による経年劣化で通称「YLOD(Yellow Light of Death)」と呼ばれる起動不良を引き起こしやすく、このデバイスも2台目です。
最後に
奇しくも全く同じタイミングでソニーから世に送り出された「SCD-XA1200ES」と「初代PlayStation 3 (CECHA00)」。両者はスーパーオーディオCD(SACD)の再生能力という共通の武器を持ちながら、高音質へのアプローチが異なるデバイスでした。 SCD-XA1200ESは、コストダウンが顕著ながらオーディオコンポーネントとしての静寂と安定感はPS3より優れていました。一方のPS3は、熱を持つ巨大なプロセッサによるハードウェアと独自のソフトウェア制御によるハイエンド機に迫る音を叩き出しました。


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