P.が意味するPocket Style PC VAIO P VPCP119KJ  

vaio
ポケットに入るVAIOがあった。現代のスマホやタブレットにはない、フルスペック(当時)のPCをポケットに入れて持ち運ぶ。

VAIO P VPCP119KJ 2010年

ノートPCの歴史は、常に「もっと小さく、もっと軽く」という欲望との戦いでした。しかし多くのメーカーが軽量化に留まった2009年、ソニーは一線を越える。上着の胸ポケットに入るPCというコンセプトを、妥協なく製品化してしまった。

所有欲を満たすデザイングリップスタイルで、もっと自由な操作感。 アクティブに使える「ポケットスタイルPC」をコンセプトにしたVAIO Pシリーズの2世代目。
VAIO P が提示したコンセプトは 「Lifestyle PC」でした。従来のモバイルPCが「デスクワークを外でもできる」というビジネス的価値観で語られていたのに対し、VAIO P は違う提案をしました。「PCは、ファッションアイテムになれるか?」
カラーバリエーションは白・黒・オレンジ・ピンク・グリーンなど複数色を展開。服のコーディネートを選ぶように、自分の気分やスタイルに合わせてPCを選ぶという発想は、当時のPC市場ではある意味異端でした。

本機の特徴はそのコンパクトさとデザインにありました。8型1,600×768ドットという極端な横長のディスプレイを採用し寸法: 約 幅245mm × 高さ19.8mm × 奥行120mm、重量は約619g(バッテリー装着時)と、当時のノートPCとしては驚異的な軽さ。厚みも19.8mmと薄く、文字通りジャケットのポケットや小型バッグにも収まる「ポケットスタイル」を実現していました。

またデザインも当時のVAIOらしい、ツヤ消し塗装の上品な質感と、光るVAIOロゴが特徴的。携帯性を追求しつつも、高級感を損なわないデザインが魅力でした。

特徴的なデザイン1つに側面からみると表面のフレームを三つ折りにしたように表面カラーを天板から底面、キーボードまで包み込むような曲線を使った一体感を表現していました。

ディスプレイは 8インチワイド液晶(1600×768ドット)。画面サイズだけ聞けば小さく聞こえるが、横解像度1600ドットという数字は、当時の13インチノートPCに匹敵する情報量だ。Webページもドキュメントも、横方向に広々と表示されるこの解像度は、小さな画面のハンデを知性で補う選択だった。

特に当時のWindowsや多くのソフトは、縦解像度が「768ドット」あることを前提にダイアログボックスなどが設計されていましたが他社のモバイルPCは当時縦が600ドットしかない機種が多く、本機はアプリケーションの面でもメリットがありました。

また本機の特徴でもあるポインティングデバイスは、この超小型ボディでマウスなしの快適な操作を追求した、ソニーの執念が感じられる設計です。

キーボードはピッチ約16.5mmのフルキーボード。さすがに通常のノートPCと同等とはいかないが、慣れれば十分なタイピングが可能な水準に仕上げられている。打鍵感はコツコツとした小気味よいフィードバックがあり、「打てるキーボード」としての矜持を保っている。

タッチパッドを置くスペースがない小型ボディにおいて、ホームポジションから手を動かさずにカーソル操作ができるのが特徴でした。

ポインティングデバイスは 光学式ポインティングデバイスをキーボード右上に配置。マウスなしで全操作が完結する設計は、カフェや移動中での使用を徹底的に想定したものだ。

このスタイルは同じようなコンセプトVAIOであるVAIO Type U(写真はVGN-U70P)で既に実現されていました。

キーボードを排除し、両手で持って全ての操作を完結させるという、VAIO P(VPCP119KJ)のモバイルグリップスタイルの原点とも言える思想で作られていました。

右手でカーソル移動、左手でクリックという、ゲーム機のコントローラーに近い操作感を実現していました。これにより、立ったままでもWindowsの複雑な操作が行えました。

キーボードはモバイルPCの制約の中、このサイズで、いかに快適にブラインドタッチをさせるかというソニーの執念が詰まったものでした。

一般的なフルサイズPCのキーピッチは約19mmですが、VAIO Pは約16.5mmを確保しています。残念ながらキーボードバックライトは搭載されていませんでした。

本体左側。左から電源コネクター、USB、ヘッドホン、無線機能スイッチが並ぶ。

右側はディスプレーなどのポートリプリケーター端子と、USB端子。

この薄型ボディにインターフェイス類をよく詰め込んだと思います

普段使用しているGalaxyFold4と並べてみました。シェイプアップされている本体の薄さがわかります。

本体スペックは
OS:Windows 7 Home Premium 32ビット
CPU:Intel Atom Z530 1.60 GHz
2次キャッシュメモリー:512KB
チップセット:インテル システム・コントローラー・ハブ US15W チップセット
RAM:   2GB(オンボード)/2GB(ビデオメモリー共有) DDR2 SDRAM(533MHz)
グラフィックアクセラレーター:インテル グラフィックス・メディア・アクセラレーター 500(チップセットに内蔵)
LCD:TFTカラー液晶 8型ウルトラワイド 解像度: UWXGA 1600×768ドット
HDD:SSD 約64GB(Ultra ATA)
外部接続端子:USB Hi-Speed USB(USB 2.0)×2 i.LINK(IEEE 1394)
別売ディスプレイ/LANアダプター VGP-DA10使用時:1000BASE-T/100BASE-TX/10BASE-T×1
ヘッドホン出力 ステレオ、ミニジャック×1
ネットワーク:WiMAX、無線LAN内蔵(IEEE 802.11a/b/g/n)Bluetooth内蔵(Bluetooth 2.1+EDR準拠、最大通信速度2.1Mbps)
メモリースティック デュオ(メモリースティック PRO-HG対応、マジックゲート対応)
SDメモリーカード(SDHC対応、著作権保護機能(CPRM)対応)
各種センサー:照度センサー,Gセンサー,デジタルコンパス
オーディオ機能:インテル High Definition Audio準拠、内蔵ステレオスピーカー、内蔵モノラルマイク
カメラ:Webカメラ《MOTION EYE》(有効画素数31万画素)
キーボード:キーピッチ約16.5mm、キーストローク約1.2mm
マウス/ポインティングデバイス:スティック式マルチポインティング・デバイス、タッチパッド
外形寸法(突起部含まず):約 幅245mm×高さ19.8mm×奥行120mm

本機の1つの特徴としてポケットに入るサイズにWWAN」(Wireless Wide Area Network)が採用されていました。当時は携帯電話回線によるWWANまたはWiMAXが選べるようになっていた。ポケットサイズだからこそ、外出時にはいつでもどこでもインターネットにつながることがコンセプトの1つでした。

本機のコンセプトはポケットサイズPCとして持ち出す価値を見いだすことだったと思います。本機が発売された時期(2010年)はまだスマートフォン自体も現在のようなPCに替わるスペックを持ちあわせていなかった為、VAIO Pで自宅でのスタイルが手軽に持ち出しができるデバイスのニーズが答えたものだったのでしょう。

本機以降はこのサイズでのモバイルPCは登場しませんが、この思想はSONYから離れVAIOとして独立後も受け継がれ以前紹介したVAIO1 S11(11.6inchサイズの小型VAIO)でも通信とモバイルスタイルは受け継がれています。

「限界を超えた小ささ」が教えてくれたこと
VAIO P VPCP119KJ は、スペックだけで語れないプロダクトでした。。Atom プロセッサの処理性能は、当時でも決して速いとは言えなかった。バッテリー駆動時間も飛び抜けて長いわけではない。
しかしそれでも、このマシンを選んだ人たちには明確な理由があった。このサイズで、これだけのことができる。という感動、そしてこれを持ち歩いている自分へのモチベーションでした。
600グラムを切る重さ、胸ポケットに収まるフォルム、1600ドットの横長ディスプレイ。VAIO P は数値では測れない価値観を私たちに提供してくれました。スマートフォンが普及する直前の時代に、PCでなければできないことを極限まで小さな筐体に詰め込んだこの一台は、モバイルコンピューティングの歴史におけるSONYの挑戦として記憶されるべき1台です。

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