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VHSとベータマックス:あの頃の「時間」を刻んだ磁気テープの魅力

映像をアナログで記録・再生するデバイス。日本では日本ビクターが開発したVHSとソニーベータ方式の2つ規格が存在した。

VHS、S-VHS,D-VHS

VHS(Video Home System)の魅力:文化を作り上げた功労者
 最終的に市場を制したVHSの魅力は、「手の届きやすさ」と「文化創造力」にあります。
 レンタルビデオ文化の創造 当初から長時間録画(2時間)に対応していました。VHSは、「映画1本をまるごと録画・鑑賞する」というニーズに完璧に応えました。
 VHSの「ざらつき」の温かさ 高画質なデジタル映像とは違い、VHSの映像には独特のノイズやざらつき(グレイン)があります。この「Lo-Fi(ローファイ)」な映像は、「温かい」と感じられ、レトロな美学として再評価されています。

NV-8800(National)1997年

松下電器(Panasonic)が発売したVHS機

VHS初のHi-Fi搭載機。当時のフラッグシップ機

ビクターが開発したS-VHS規格の初号機

S-VHSの初号機HR-S7000から質感とデジタル機能を搭載した2号機

ビクターがS-VHS技術の集大成と付けたビデオデッキ

SonyのVHS Hi-Fi方式の初号機

Sonyが開発したS-VHS初号機

オーディオ機器と一緒に置いても遜色のないデザインのS-VHSビデオデッキ。ローディングギア、コンデンサ修理

WV-H3 (Sony) 1995年

Hi8/VHSのハイブリットレコーダー

WV-D1000(Sony) 1997年

S-VHS,DVのハイブリットレコーダー

SonyのD-VHSの初号機

D-VHDフォーマット 次世代のビデオ-テープとして開発されたフォーマット
D-VHSはVHS との互換性を維持しつつ,より高画質・長時間のデジタル録画を可能にするデジタルビデオテープとして開発されたフォーマット。
D-VHS の特徴は以下の4点に集約される。
1.現行放送のアナログ記録とデジタル放送のビットストリーム記録が可能
2.テープメディアのため記憶容量が大きい(最大で約44GB)
3.VHSとの互換性
4.製品の製造にVHS の技術や部品を流用でき低コスト
最大のポイントであるデジタル放送の記録は、映像フォーマットはMPEG2を採用していたのが大きな特徴。またVHSの標準モードと3倍モードのように,高画質記録から低画質長時間記録まで6種類の記録モードが規格化されていました。
ベータマックス(β、EDβ)

ベータマックス(Beta)の魅力:技術への誇りとコンパクトさ
ベータマックスは、ソニーが開発した「技術者のプライド」が詰まったフォーマットです。
 画質・音質へのこだわり ベータマックスは、テープ幅に対する記録密度が高く、初期の技術ではVHSよりも高画質・高音質であると評価されていました。特に画質にこだわる映像ファンやプロ用途では、最後まで根強い支持を集めました。
 コンパクトなカセットサイズ VHSのカセットよりも一回り小さく、当時のソニー製品が持つ「小型でスタイリッシュ」というブランドイメージに合致していました。デッキ本体のデザインも洗練されたものが多く、所有欲を満たしてくれました。
 私も含めマニアックな優越感 大衆的なVHSに対して、「ベータ」は少しマニアックで上質なものを選ぶという優越感がありました。後の「ED BETA」など、画質向上を追求した技術革新の歴史も魅力的です。

オーディオ感覚のリニアスケーティングメカを採用したHi-BandβHi-Fi

β1搭載の編集の特化したHiBand-Beta機

修理編

リニアスケーティングメカ、デジタルメモリー搭載

EDV-5000 (Sony) 1988年

シンプルでスマートなデザインのEDβの普及機

共通するノスタルジー:愛おしい「不便さ」
ベータもVHS、8㎜もデジタルメディアにはない共通の「儀式」と「体験」を持っていました。

 巻き戻し音の記憶、リールの 「キュルキュルキュル……」という、テープを巻き戻す独特の機械音。そして、見終わったら必ず巻き戻しをしなければならないという「手間」。この不便さこそが、映像を物理的に扱っているという感覚を伴い、愛着を生みました。

 トラッキング調整の手間 映像が乱れたときに、デッキの「トラッキング」つまみを回して調整する作業。映像が安定した瞬間の喜びは、現代のワンクリック再生では味わえません。あの映像の乱れもまた、磁気テープというアナログメディアの個性でした。

 ディスクメディアで体験できない棚に並んだコレクション 大切な録画や購入したソフトが、ズラリと棚に並ぶ姿は、コンテンツを所有している実感を強く与えてくれました。