PRONOTE mini CF-11FS52/32

Note_PC
Panasonicが挑んだモバイルPC黎明期の先駆け。PRONOTE mini CF-11FS52/32

ボディカラー: マットブラック 標準価格:CF-11FS52 / CF-11FS52AJ 348,000円(税別)CF-11FS32 / CF-11FS32AJ 328,000円(税別)

PRONOTE mini CF-11FS32 1995年 本機は1995年11月、松下電器産業が発売したB5サイズのサブノートパソコンです。翌1996年9月に登場するLet’s NOTE mini AL-N0(前回紹介)の直系前身機にあたり、重量わずか1.29kg・外形寸法255×162×36mmという、後のLet’s NOTEシリーズとほぼ同一の筐体を持った歴史的な一台です。 

PRONOTEとはプロフェッショナルのためのノートという名前が示す通り、本機のコンセプトは一切の妥協を持ち込まないことでした。1995年当時のノートパソコンは2kg前後が当たり前で、ノートPCと呼ばれているが実態はデスクトップの代替品という機種がほとんどでした。 

そんな時代に松下は1.29kgという軽量ボディと充実したインターフェースで本当に持ち出せる、本当に仕事ができる。というスタイルを問いかけました。このCF-11Fは、後にブランドを変えて大ヒットを記録するLet’s NOTEシリーズの、いわば試作品にして完成形でもあった一台なのです。 

デザインとコンセプト
フォルムは全体をマットブラックで統一した、装飾を一切排した実直な外観です。当時のノートパソコン市場ではグレーやベージュが主流だったなか、全身をブラックでまとめた本機は独自の存在感を放っていました。 
筐体はABS樹脂製で、このサイズ・重量にしては十分な剛性が確保されています。翌年以降のLet’s NOTE AL-N1・AL-N2ではマグネシウム合金筐体へと進化し、さらなる軽量・高剛性を実現していきます。CF-11Fはその直前にあたる樹脂筐体の完成形であり、素材の進化という意味でも過渡期の重要な一台でした。  
前回紹介した本機の進化形のAL-N0と並べてみました。 
外観は変わりません。写真では分かりにくいですが若干カラーリングが異なり本機はマットブラックでAL-N0はダークグレー色です。  
天板はシンプルな平面で、ロゴ以外の装飾は何もない。ここに松下の使うための道具という設計思想がはっきりと表れています。 
外観の特徴 本体は外形寸法が幅255mm × 奥行162mm × 高さ36mm。翌年登場するLet’s NOTE mini AL-N0(幅255mm × 奥行162mm × 高さ36.4mm)と比べても誤差の範囲という同一サイズで、この筐体の完成度がいかに高かったかが分かります。CF-11Fが確立したこのフォルムが、そのままブランドを変えてLet’s NOTEとして走り続けた——それだけの完成度がこのボディにはありました。 
ディスプレイは7.8型(インチ)デュアルスキャンSTN(DSTN)カラー液晶を搭載、グラフィックチップはChips and Technologies製の「CT65545」。DSTNはTFTに比べて応答速度や視野角で見劣りする面があるが、消費電力が低くバッテリー駆動時間の確保に貢献する。コスト面でもTFTより有利でした。 
キーボードはOADG準拠88キーで、このB5サイズの筐体に収められながらも実用的なキーピッチを確保。
ポインティングデバイスには直径16mmの大型トラックボールを採用しています。マウスを別途用意することなく指先でボールを転がすだけでカーソルを操作できるこの方式は、狭いテーブルや膝の上でも快適に使えるモバイル用途に最適な選択でした。 
後のLet’s NOTEシリーズへと受け継がれるトラックボールの系譜は、このCF-11Fにその原点があります。 
キーボード上部にバッテリーインジケーター、音声ボリューム、輝度調整スイッチが並びます。 
本体右側面にはPCカードスロット((TYPE2×2またはTYPE3×1))が配置され、カードを挿した際の取り出しやすさも考慮されたレイアウトです。 
そのとなりは音声系はマイク入力とヘッドフォン出力(いずれもミニジャック)を装備し、サウンドはSoundBlaster互換のモノラルスピーカーを内蔵。プレゼンや通知音の出力に対応しています。 
バッテリーは底面に装着するスタイルで、スペアバッテリーを携行することで長時間の出先利用にも対応できる設計でした。 
インターフェース:1995年のフィールドワークをすべてカバー
接続端子の構成は、1995年のビジネス現場で必要なものをすべて網羅したものです。 背面にはシリアルポート×1(RS-232C、Dsub 9ピン)とパラレルポート×1(Dsub 25ピン)を装備。当時のビジネス用プリンターはほぼ全てパラレル接続であり、外部のプリンターに直結して書類を印刷できるこの構成は、フィールドワークの現場で非常に実用的でした。 
外部ディスプレイ出力(アナログRGB、ミニDsub 15ピン)を標準装備しており、訪問先のプロジェクターや大型モニターへの接続も容易です。会議室での画面共有が「当たり前」になる少し前の時代に、これを標準で備えていた意味は大きかった。 外部マウス/キーボード端子(ミニDIN 6ピン)により、デスクに戻った際は使い慣れたマウスとキーボードをそのまま接続できる。外では軽量ノートとして、デスクではデスクトップと同等の使い勝手でこの切り替えのシームレスさが、本機を「メインマシンとして使える」ものにしていました。 FDD専用コネクタを介して外付け3.5インチフロッピードライブを接続できます。1995年のソフトウェア配布はほぼフロッピーが中心でしたから、このコネクタの存在は実用性の面で欠かせないものでした。ただし本体には内蔵しない設計により、重量1.29kgという数値を達成しています。「内蔵するか、外付けにして軽量化するか」というトレードオフを、本機は明確に「軽量化」側に振り切った。この判断こそが、CF-11Fをモバイル機足らしめる本質でした。 
本体スペックは
CPU:Intel DX4 75MHz
メインメモリー:標準8MB(最大24MB) オンボード8MB + 増設スロット×1(144ピンDIMM)
ハードディスク:540MB
ディスプレイ:7.8型 デュアルスキャンSTN(DSTN)カラー液晶
グラフィックチップ:Chips and Technologies CT65545
PCカードスロット:TYPE2×2またはTYPE3×1 外
形寸法:幅255mm × 奥行162mm × 高さ36mm
質量:約1.29kg(バッテリー含む)
バンドルOS:MS-DOS 6.2 / Windows 3.1 標準価格:348,000円

CPUのIntel DX4 75MHzはMCM(マルチ・チップ・モジュール)技術の採用により、CPUやVRAM、VGAコントローラ等を集積。サブノートパソコンながらも十分なパワーを実現し、Windows 95にも対応できると謳われていました。標準8MBのRAMは最大24MBまでの拡張に対応しており、将来的なシステム強化にも備えた設計です。 
バンドルOSにMS-DOS 6.2とWindows 3.1の両方を収録している点は、この時代の過渡期を象徴しています。DOSの世界とWindowsの世界、どちらのユーザーも取りこぼさない実用的な判断でした。翌年の後継機AL-N0がWindows 95を標準搭載することを考えると、このCF-11FはまさにDOSとWindowsが交差する時代の記念碑的なマシンといえます。 
CF-11Fが遺したもの CF-11Fは1995年に発売されてから1年も経たずに、後継のLet’s NOTE mini AL-N0(1996年9月)にその座を譲りました。CPUはAMD 5×86-133MHzへと強化され、OSはWindows 95に刷新。そして何より「PRONOTE」から「Let’s NOTE」という、より親しみやすいブランド名へと生まれ変わった。しかし筐体のサイズ、重量、液晶サイズ。本機が確立したすべてのフォルムはそのまま引き継がれました。AMDへのCPU切り替え、Windows 95への対応、そしてトラックボールの継承はこれらはすべて、CF-11Fという「試作品」が現場で得たフィードバックと完成度の結晶でした。名前こそ消えましたが、CF-11Fがなければ「レッツノート」の誕生はなかったでしょう。 
当時の私はこのCF-11FではなくThinkPad(220230CS)シリーズを選んでいましたが、今こうして並べてみると(写真は230CS)ThinkPadがデスクや会議室での使用を前提としたビジネスPCとして完成度を追求したのに対し、PRONOTE miniは持ち出して、外で完結させるというモバイルPCとしての哲学を一貫して追求していたのだと改めて感じます。
サイズ的には近いThinkPad220です。(220は更にコンパクトです。) 
IBMの中でもトラックボールを使った唯一のモバイルPCでした。 
当時既にIBMのPalmTopPC110が発売されていてインパクトは若干弱かったですが、PT110はキーボードや画面サイズなど制約が多く、実用的なサブノートとして登場したのが、PanasonicのPRONOTE でした。  
派手さはなく、飾らない誠実さそれがPRONOTE miniというマシンの本質でした。  派手さはないものの、日本のモバイルPC史における重要な一台。それがPRONOTE mini CF-11FS52/32なのです。 
ブランドが変わり、CPUが変わり、OSが変わっても、この誠実さだけはLet’s NOTEシリーズを通じて今日まで受け継がれています。CF-11Fはモバイルという概念が日本に根付く以前に、それを静かに体現した一台でした。 

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